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<第二章No.1>
相変わらず 太陽は狂ったように 照りつけている。8月上旬。
古びた二階建てのアパート。203号室。
午前7時30分。
寝室のベッドの上 夢にうなされ 飛び降りた知也は ハァハァと 荒い息を吐き 首筋を流れる汗を グイッと拭った。
「どうしたの?
悪い夢でも見たの?」
眠そうに目を擦りながら 健一は訪ねる。
乱れた長い髪をかきあげ フゥーッと息をつく知也。
「何でもない…。」
呟く知也に 健一は頬杖をつく。
「また 見たのかい?
あの夢を…。」
「…しばらく見なかったのに
久しぶりに見ると
何だか すごく最近のように 鮮やかで…。
もう12年も前なのに
変なの…。」
知也の言葉を健一は 黙って聞いていた。
そして 遠くを見つめるような瞳で こう呟いた。
「姉さんが居なくなって
もう12年が経つんだね。
あの時 君が4歳で
僕は13歳だった。」
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