第一章 初恋の人

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太陽の光りが眩しく照りつける。―7月上旬。 <第一章 No.1> 希望ヶ丘学院。午前7時50分。 正門を通り 多くの学生が通学して来る。 その中を学生服のシャツのボタンを 胸元まで開け 黒いスニーカーの踵を踏みつけ 一人の少年が ペタンコのカバンを小脇に抱え歩いている。 中沢 秋良(なかざわ あきら)。 彼は初等部に通う 16歳だが 結構 学院内では有名だった。 サッカーをやらせれば 右に出る者がいない程 上手かった。 高等部の者も 彼には逆らえず 全て彼の言うがまま動いている。 初等部の秋良が キャプテンをやっていても 誰も何も言わない。 秋良は サッカー以外でも かなり 有名だった。 短気で血の気の多い彼は よく問題を起こしていた。 入学してきた当日に 高等部の者3人に 態度が悪いと言われ 殴り合いをして 怪我を負わせていた。 靴箱で靴を履き替えていた秋良は 後ろで話している 二人の女生徒の話の内容に ピクンと眉を上げた。 「ねぇー 絵理香(えりか)。 鷹島(たかとう)君に 気持ち打ち明けたの?」 そう聞かれ 絵理香と呼ばれた少女は 頬を赤くして 慌てて 彼女の口をふさいだ。 「やだっ!優子(ゆうこ)。」 そう言って 絵理香は 秋良の鋭い視線に ドキッとなる。 優子も 目を丸くして 秋良を見つめる。 秋良は 二人をじっと黙ったまま 見つめていた。 二人は 蛇に睨まれた蛙のように その場で動けなくなってしまった。 しばらくして 絵理香と優子は 肩をポンと叩かれ ハッと我に返る。
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