第一章 初恋の人

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「どうしたの? 二人共。」 その声に振り向いた二人は ホッとしたように 息をつく。 長い黒髪を サラリと後ろにはね 鷹島 知也(たかとう ともや)が 優しく微笑み 立っていた。 「お、おはよう。 鷹島君。」 頬を染め 絵理香は はにかみながら そう言った。 知也は にっこりと微笑み 二人を見つめる。 「おはよう。 白鳥(しらとり)さん。 五月(さつき)さん。」 そして 知也は秋良の方に顔を向けると 軽く笑みを浮かべる。 「おはようございます。 キャプテン。」 秋良は プイッと顔を背けると 小さく呟く。 「…ウス。」 そう言うと 秋良はサッサッと 教室へ向かった。 その後ろ姿に 知也は声を掛ける。 「制服のボタンは きちんと止めて下さい。 今日 服装検査がありますよっ。」 知也の言葉に 秋良は小さく舌打ちをする。 クスクスと笑い 秋良の後ろ姿を見つめる知也に 優子は 少し眉を寄せ聞いた。 「鷹島君って 苦手な人って 居ないでしょ?」 その問いに 知也は首を傾げる。 「えっ? 何で?」 不思議そうに見つめる知也に 優子は軽く息をつく。 「だってぇー…。 あの中沢君に ああいう事 言えるんだもの。 中沢君と言えば 高等部はおろか 先生だって 何も言えないのに…。」 それを聞き 知也はフッと 口元に笑みを浮かべる。 「ああ見えても あの人は 結構 ナイーブなんだよ。」 その言葉に 優子は絵理香と顔を見合わせ 呆れたように 肩をすくめた。
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