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由紀が行きたかった屋台はどうやら綿菓子屋のようだ。目的の綿菓子屋には数人の小さな子どもが、どんどん大きくなっていく綿菓子に目を輝かせている
日が長いとはいえ夏の太陽も一気にその姿を消し当たりはもう良い暗さになっている。
ふと周りを見渡せば結構賑わっていて何か見てるだけで楽しくなってきた
「ほら祐ちゃん、私たちの番だよ!」
「お、そうか」
美波の声と由紀に袖を引っ張られ屋台に視線を戻すと俺たちの前にいた小学生位の男の子と女の子が顔に満面の笑みを浮かべて人混みの中に走り去って行った
「えーっと美波は食うのか?」
「うん!」
「じゃあ綿菓子二つ」
「特大で!!」
両手を目一杯広げて言うそんな美波の無茶なお願いに屋台のおじさんは苦笑いを浮かべながらも慣れた手つきで作り始めた
「お前は小学生か」
「あー!小学生って言った方が小学生なんだよ!」
「お前なー」
「二人とも!」
俺と美波が喧嘩を始めかけるといつもは静かな口調の由紀が強い口調で俺たちの間に割って入ってきた
「喧嘩しちゃダメ」
由紀の目には譲らないものがあり俺たち二人を黙らせるには十分なものだった
「あーその……悪かった」
「ううん、私の方こそごめんね。祐ちゃんも由紀も」
「分かってくれたならいい」
由紀は優しく微笑むと背伸びして俺と美波の頭を撫でた
「兄ちゃんたち綿菓子出来たぞ。あと、ちょっと小言になるが祭りは楽しくだ!」
「ありがとうございます。もうしませんよ」
お金を渡し綿菓子を受けとってからおじさんにお礼を言い綿菓子屋を後にした
「それで美波は何の屋台に行きたかったんだ?」
「私はたこ焼きだよ。ん、おいしー!」
「へ~…って早っ!?」
美波に訊けばどうやら次はたこ焼きらしい。そして美波を見た時残り僅かになった綿菓子が目に入った
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