二つの蕾

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少ししてやっと人混みを抜け出した俺は一直線に神社の裏に向かって走る 「…………」 走っている間、全然走ってないのに口の中が渇き胸のあたりがモヤモヤした そして辿り着いた 「由紀?」 「……!」 さっきのはやはり由紀だった様だ。だが由紀はしゃがみ込み体を揺らしただけで動かなかった 「……どうしたんだ由紀?心配したんだぞ」 「ご、ごめんなさい。その……」 ここまで由紀がしゃべると続きを遮る様にニャーと声がした 「ネコ?」 周りを見渡しても猫はいない。 気のせいか…… そして俺は未だに立ち上がるどころかこちらを向いてもいない由紀の正面に回り込む 「由紀、本当にだいじょ……」 「あ」 回り込んで俺の見たものは由紀の腕の中に丸く収まった気持ち良さそうな顔の猫だった もしかして…… 「あ、あのねっ」 俺が喋ろうと思ったが由紀が必死な感じで何か言おうとしたので止めた 「たこ焼き買った後戻ろうとしたらこのネコが見えて、それで……」 由紀はここまで話すと下を向いたまま黙ってしまった 「そっか!良かったー」 だが俺はそれを聴いて思わず体の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ 「え?」 「由紀に何かあったのかと思ったからさ……」 「ごめんなさい」 「ははっ、もういいって!ほら今度は、美波を探しに行こっ!」 俺は由紀の手をとり、今度は美波を探すために歩き出した
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