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快楽殺人及びカニバル(食人)を語る際、
彼抜きでは
それはなせないだろうと思われる
人物である。
*
彼は鑑定士ですら、
<真っ先に子供を預けたくなるような>
穏やかな容貌の持ち主であった。
彼の皮膚の下に煮えたぎる狂気を、
誰一人として
見破れる者は居なかったのだ。
1928年5月、
マンハッタンのチェルシー通りにある
アパートの一つの扉を
ある男が叩いた。
住人であるバッド家の家人が出てみると、
そこにはいかにも紳士然とした、
上品な服を着た
穏やかな笑みを浮かべた老人が立っていた
老人はフランク・ハワードと名乗り、
新聞に出ていた求職広告を見て
やってきたのだと丁重に告げた。
求職広告を出した長男に老人は
「真面目に働くなら週15ドル出しても良い」
と言い、
貧しいバッド家の人々は
素直にそれを喜んだ。
翌々週再び訪ねてきた老人は、
またも上質なスーツに
手土産の高級なチーズを携え、
10才になるバッド家の娘グレースを、
コロンバス通り137番地にある
妹の邸で開かれる
盛大なバースデーパーティーに
連れていってやりたいのだがどうか、
という話を持ちかける。
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