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雨の神戸…
「お母さん、このボロ傘いい加減捨てたら?」
毎年梅雨時期になると思い出す…もう20年くらい前の事。
昔から一人旅が好きな私。
もちろん友達とワイワイ旅行するのも好きだったけど。
神戸…
いつものように急に行きたいなぁって思って自分でホテルを予約して、一泊で行く事に…
格安ホテルを予約した為着いてみてびっくり。
駅から徒歩で1㎞はありそう。うへぇ~
田舎のど真ん中にあるホテルで周りは田んぼ。
こんなとこにビジネスホテルなんて…不思議よね
無事一泊し翌日ホテルを出て駅までテクテク歩いていたら、急に雲行きが怪しくなって、ザーッと雨が降り出した。
傘なんて持ってないよ、私…
周りは田んぼで雨宿り出来そうなとこがない。
どうしよ~このままずぶ濡れ?
ふと、前方を見ると傘をさしたおばちゃんが…
ちょっと躊躇ったけど声をかけた。
「すいませ~ん、駅はどっち方面ですか?」
「あら?あんたずぶ濡れじゃない、傘持っとらんの?」
おばちゃんはそう言って私を傘に入れてくれた。
「おばちゃん家近くだからちょっとおいで」
言われるままに着いて行くと…
納屋みたいなとこで、何やらゴソゴソ。
「これ、もう使ってないボロ傘だけど無いよりましだから。もう返さんでいいから持って行き」
そう言って傘を私の手に渡してくれた。
「ありがとうございます」
本当に嬉しくて何度もお礼を言った。
名前も何にも聞いてないけど、知らない土地で人の温かさが身に沁みた…この時期になるといつも思い出す
「その傘ね母さんの宝物だからあんたがお嫁に行く時あげるね」
「…え?絶対いらないよ~そんなボロいの」
「あ、そ、じゃ絶対あげない(笑)」
「…へんなの~」
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