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さっきまで真っ黒だった海景色が
だんだん明るくなってきている。
チェイスと話しているうちに、夜明け間際になったらしい。
濃紺だった空も、いつの間にか白っぽくなっている。
頬を撫でる潮風が気持ち良い。
変わっていく海の姿に、また見とれてしまう。
「なんだお前、この景色が好きなのか?」
とチェイスが海を見たまま問いかけてくる。
「ああ」
と、僕は短く返した。
「ま、夜明けの海なんざこれから嫌ってほど見れるんだ。今は仕事しようぜ」
僕の肩を軽く叩いて、チェイスは自分が持ってた荷物を担ぎ直して先に船に行ってしまった。
僕も急いで荷物を担いでチェイスの後を追いかけた。
初めての航海士として船に乗ることに、一抹の不安と、多大なる希望と喜びを、胸に秘めて。
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