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朱里は、そんな部員達の顔つきを見て、内心ほくそ笑んだ。
葵が着替えている間に、部の連絡メールで、葵や陸が練習に参加することを送信しておいたので、その内、部員の何人かはやってくるだろうと踏んでいた。
葵や陸の弓を射る姿は、朱里から見ても美しいと思えるほどで、それに魅せられた生徒達が入部してくるのだが、あまり練習に参加していないことが、朱里にとっては不満だった。
入部したからには、弓道の魅力を感じてもらい、大会にも出場してほしいと思うのだが、如何せん練習不足でそこまでいかない。
そこで、学園の人気を博している二人には悪いが、呼び込み役…と言えばまだ聞こえはいいが、はっきりと言ってしまえば、部員達をおびき寄せるエサとなってもらうために、なるべく練習に参加してもらいたくて躍起になっていたのだった。
「そこは空いているのかしら」
いまだにぽーっと葵に見惚れている部員に朱里は声をかけた。
六つある的の内、四つの射位にはすでに人が立っており、空いている射位は二つ。
「は、はい!どうぞ!」
一人が弾かれたように答える。
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