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ここのところ、ずっと悩んでいた葵は、こんな状態では練習にならないと思い、練習するかしないかを各自の判断に任せるというのをいいことに、いつも一時間だけはしていた練習をサボっていた。
陸は、生徒会長としての仕事があるため、忙しいことを理由にあまり練習に参加していないように思われていたが、本当は誰もいなくなった遅い時間に、一人明かりを灯して練習をしていた。
二人の状況を知らない朱里は、葵や陸が練習に出るか出ないかで、部の活気がまるで違うことを分かっていたので、なんとか二人を練習に出そうと躍起になっていた。
「さ、柊谷さん、向井くん、行くわよ」
「え?あ、あの、まだ仕事が…」
「俺があとはやっておくから、葵、行ってこい」
「え?」
「何、言ってるの!向井くんも行くのよ」
ガシッと掴んだ葵の細い腕を離さず、反対の手で陸の腕を掴むと立たせようとする。
普段動じることのない陸も、この部長の勢いにはいつも押され気味だった。
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