546人が本棚に入れています
本棚に追加
短く刈られた髪に、目鼻立ちのはっきりした顔が、ボーイッシュな印象を与える。
加えて、ひょろりとした身長は176センチと高く、それが威圧感を醸し出していた。
「いや、これ纏めて提出しなきゃならないんだ。明日から、休みに入るだろ?それまでに提出するように言われてて」
陸は掴まれた腕とは反対の手で資料を手に取って見せる。
「仕方ないわね。じゃあ、それが終わったら来るのよ」
「了解」
陸はホッとして、苦笑いを浮かべながら返事をする。
「さ、柊谷さんは行きましょ」
朱里は、渋々納得すると、葵の腕を引きながら生徒会室を後にした。
――葵にとって久しぶりの弓道場。
校舎を挟んで体育館とは逆の敷地にある。
比較的広く造られた弓道場は一般的な六人立ち近的場。
葵は、朱里に急かされて、有無を言わさず弓道衣に着替えさせられ、道場に連れて行かれた。
道場の入り口付近で休憩していた数名の部員が、朱里に続いて入ってきた葵を見て、目を見張った。
長い黒髪を後ろで纏めて、弓道衣に身を包む葵の姿は、制服姿よりも似合っていて、見たことのある部員はおろか初めて見た部員は尚更、その美しさに息を飲み、それまでの動作を止めて魅入っていた。
最初のコメントを投稿しよう!