想い

12/31
前へ
/241ページ
次へ
短く刈られた髪に、目鼻立ちのはっきりした顔が、ボーイッシュな印象を与える。 加えて、ひょろりとした身長は176センチと高く、それが威圧感を醸し出していた。 「いや、これ纏めて提出しなきゃならないんだ。明日から、休みに入るだろ?それまでに提出するように言われてて」 陸は掴まれた腕とは反対の手で資料を手に取って見せる。 「仕方ないわね。じゃあ、それが終わったら来るのよ」 「了解」 陸はホッとして、苦笑いを浮かべながら返事をする。 「さ、柊谷さんは行きましょ」 朱里は、渋々納得すると、葵の腕を引きながら生徒会室を後にした。 ――葵にとって久しぶりの弓道場。 校舎を挟んで体育館とは逆の敷地にある。 比較的広く造られた弓道場は一般的な六人立ち近的場。 葵は、朱里に急かされて、有無を言わさず弓道衣に着替えさせられ、道場に連れて行かれた。 道場の入り口付近で休憩していた数名の部員が、朱里に続いて入ってきた葵を見て、目を見張った。 長い黒髪を後ろで纏めて、弓道衣に身を包む葵の姿は、制服姿よりも似合っていて、見たことのある部員はおろか初めて見た部員は尚更、その美しさに息を飲み、それまでの動作を止めて魅入っていた。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

546人が本棚に入れています
本棚に追加