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「――急げぇ、始業式始まるぞ」
鈴原拓海は、校門に立って登校してくる生徒へ声をかけた。
「拓海ちゃん、おはよう」
「おはよう。――先生です」
朝の挨拶をする生徒に挨拶を返しながら、訂正を加える。
――まったく、拓海ちゃんって…俺って生徒になめられてるよなぁ…
男女構わず、生徒から拓海ちゃんと呼ばれいる現状に、鈴原拓海は心の中でぼやいた。
鈴原拓海は、この学校の数学教師で、歳は24歳。
童顔だが、身長は高く、少し色素の薄い髪は長めで、春風にサラサラと靡いている。
拓海は、童顔のせいで拓海ちゃんと呼ばれていると思っているが、実際は違う。
どちらかといえば、時々ムキになる所や、バレンタインなどで生徒からチョコをもらい、どうしたものかと真剣に悩む様などその言動や仕種に好感をもたれ、そう呼ばれている。
しかし、そんなこと知る由もない拓海は、眼鏡でもかければ威厳でるかななどとピント外れなことを考えたりしていた。
「さて、そろそろ時間だな」
拓海は、人通りの無くなった辺りを一瞥すると、腕時計に視線を落として呟いた。
「あと、お願いします」
常駐の警備員に門の閉場を任せ、拓海は、始業式が始まる体育館に向かって歩き出した。
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