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  そのまま入院生活が続いて行ったある日、父と母のボソボソとした話し声が聞こえてきた。 ……… 『何で? さやだけ何で? …どうにか助からんの?』 病室の外で話す両親の声はまともにウチの耳に入ってきた。 母の震えた声にウチは耳をすます。 『落ちつけ。さやに聞こえたらどーするんや。 助けたいんは皆一緒やろ。 お前だけちゃうねん』 『だってっ…でもっ…』 『最近発作ひどなって、アイツの体がもう限界なんや。 肺がもたへん言うてたやろ』 ……… え? ……なに? 限界? ん? どうゆう事…? もたへんて何? え、ウチ…もしかして、死ぬん…? ずっと聞かれへんかった事。 知りたくて… 知りたくなくて… ずっと胸の奥に閉じ込めてた事。 とうとう、はっきりと聞いてしまった。 寝てると思ってるんか知らんけど、何でこんな所で そんな話してんの? 小さい声で話してるつもりなんか知らんけど、丸聞こえやん…。 …ただの不安が大きい恐怖へと変わる瞬間やった。
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