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「ホントに行くのかい、理子さん?」
「ええ、この子の事、よろしくお願いします。お義母さん」
とある山奥、夜も半ばの頃、とある村のある古びれた家の前で女が胸に抱いた赤ん坊を老婆に受け渡した。
「確かにここでは山神様の加護があるから少しは安全じゃろうけど……この子の将来を考えたらやはりアンタのそばに置いた方が…」
と、老婆がそこまで言いかけたところで言葉が止まった。
目の前に立つ理子と呼ばれた女が泣いていたからである。
「私も……この子が一緒に居てくれたら……どんなに嬉しいことか……ウグッ」
「理子さん……」
「でも、ダメなんです!……だって、この子の力は強大すぎる……から」
掠れる声で言いながら理子は赤ん坊の頬を撫でる。
「まったく、こんな可愛い嫁さんほったらかしてウチのバカな息子は何をやってるんだろうね!」
ふんっ、と鼻息を漏らして老婆はため息をつく。
「ふふっ…そう、せめてやらないでください。あの人もあそこで頑張ってるんですから」
少し笑みを取り戻した理子は涙を拭いながら言った。
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