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「そうかい。じゃあ、行っといで、この子は立派に育てて見せるからさ」
「お義母さん……はい、絶対に迎いに来ます」
夜闇に吹き向ける風と共に老婆は何かを感じ取った。
「ん?どうやら追っ手が掛かったみたいだよ。さあ、早く行きな」
老婆が感じたのは数十キロも先の気配。
何かを探すように殺気立たせてその場をうろついている数人の気配を感じ取ったのだ。
「ふふ、さすがです、お義母さん。でも、気にしなくてもいいと思うわ。多分、下っ端よ」
それと同じく理子も同じ気配を感じ取っていたのだ。
「そうかい?まあ、アンタなら大丈夫だろうけどね」
心配性なのかそれでも少し不安が老婆の顔に出てくる。
「ええ…じゃあ、行きます。私、あの国へ」
「頑張ってくるんだよ。立派な教師になりな!」
頷いて理子はそのまま振り替えにもせずに闇の中へと消えていった。
「アンタのお母さんは強い人だよ…バカ息子にはもったいないくらいだ…」
老婆の眉間により一層、皺が寄った。
眠ったままの赤ん坊の手を取ってバイバイと理子が去っていた方へと揺らした。
「アンタも強くなるんだよ。いずれアンタも行くことになるんだからね。あの………」
―――学園国家に。
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