261人が本棚に入れています
本棚に追加
はあはあと肩で息をする影山の首から命が流れ出している。白く整った肌には良く紅が映えて、とても綺麗だと思った。向井は汗混じりのそれに舌を這わせて丁寧に舐め取り、喉の奥へとゆっくり流し込む。やっぱり当たり前に血の味がした。血の味、影山の味。影山暁生の血の味。
「腹減った……なー、肉、あかんかな」
「夏場やしヤバいやろ、さすがに……」
「……肉なしカレーかあ」
「お前のせいや」
「なんやねん、むーちゃんもその気やったやんかー」
目尻にくしゃりと皺を作りこぼれる笑顔が眩しい。暴力とセックスだけが生きていくための支えで、2人を繋げるものだった。いや、それ以外に必要がないのだろう。
「……なあ、アキ」
「なにー?」
「俺らってクズやな」
「は、それこそ今更やん」
狭いアパートの一室に、2人の男の笑い声が響いた。窓の外、どこか遠くの方でパトカーのサイレンが聞こえた気がしたが、それすらも面白くて腹を抱えて笑い転げた。ほとんど腐りかけた肉と洗面台の引き戸に飛び散った精液はイコールだ。俺達の命なんてそんなもの。そうだ、ずっと前から俺達はクズだった。だったらそれでいいじゃないか。そんな意味もないことをひたすら話して、また笑って、立ち上がる気力もなくその場で横になりイビキをかいた。
最初のコメントを投稿しよう!