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向井はそんな彼の様子を横目で見ながら、尻のポケットからくしゃくしゃの煙草の箱とライターを取り出した。残り1本になっていた、白く細長い煙草を咥えて火を付ける。一息吸えばイライラが落ち着き、二息吸えばすっと体の力が抜ける。扇風機から来る生温い風が、白い煙を嬲って蹴散らした。中学時代から吸い続けた味は、今では心地好い苦みになっている。
「煙草って美味いん?」
「……美味いっちゅーか、口寂しいから吸うとるだけや」
「苦い?」
「んー……まあまあ」
「絶対甘いもんのがええて、煙草ばっか吸うとったら肺ガンなるで」
「もう今更やん」
影山と向井は小学校からの同級生だった。昔からやんちゃで喧嘩ばかりしては教師に呼び出されていた向井に比べて、影山は大人しく真面目で成績優秀、心優しい生徒だった。お互いになんとなく惹かれるところがあってなんとなく仲良くなり、25になった今もなんとなく関係を続けている。そんな2人は性格だけでなく外見も面白いくらいに真逆で、どうしてこの2人が一緒にいるのかと不思議になるほどまさに凸凹コンビと呼んで相違なかった。
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