Ⅲ 愛逢月の林檎とゴンドラの唄

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Ⅲ 愛逢月の林檎とゴンドラの唄

  林檎、一つ ゴンドラ乗せて 謡うは懐かし乙女唄 今宵は貴方の星座下 唄う、独り 黒髪の未亡姫 愛逢月にはなりましたものの 中々 梅の雨が止みませぬ 嗚呼、なんという 甘酸味の飴でしょうか わたくしには わたくしには 酸味が強すぎます由縁(ゆえ) 泣いて、しまいます だって 湖には、     貴方が、         映りますので 嗚呼、貴方を思う 林檎独つ かじっては酸の雨をほだして 空になった なにか紅いものを 抱きしめては、愛しんでは、 泣いている様な 織姫星独つ 君が唄った懐かしい唄 昔、昔の、流行り唄 私は泪を林檎に落として 林檎ジュースにしては おちおち 其れを飲み ゴンドラの唄を謡う いのち短し 恋せよ 少女 赤き唇 褪せぬ間に 熱き血潮の冷えぬ間に 明日の月日のないものを いのち短し 恋せよ 少女 いざ手を取りて彼の舟に いざ燃ゆる頬を君が頬に ここは誰も来ぬものを いのち短し 恋せよ 少女 波に漂う舟のよに 君が柔手を我が肩に ここには人目ないものを ここには人目ない、ものを  
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