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「(体が…熱い…)」
沙耶は、辺りを見渡した。
「(燃えてる…。あぁ…そうか…)」
『沙耶』『辰上さん』『綺麗な花だな』『えぇ。家に飾ろうと思って』『何という花なんだ?』『これは桔梗です。太い根を干して乾燥させると、咳止めにもなるんですよ』『お前は、草花に詳しいな』『母上に教えていただきました』『そうか…。亡くなられてから5年か』『はい』『…1人で辛くないか?』『もう慣れました。それに…私には、辰上さんや西村さん達がいらっしゃいますから』『沙耶…。…あまり抱え込むなよ』『辰上さん…はい。ありがとうございます』『辰上、稽古の時間だぞ』『今行く。沙耶、気を付けて帰れよ』『はい』
辰上さんは、私よりも4歳年上。
早くに両親を亡くした私を気に掛けてくれた。
凄く優しくて、周りからはちょっと頼りない、って言われてるけど、私にとっては、誰よりも優しい人だった。
『…』『辰上』『西村。まだ残ってたのか』『それはこっちのセリフだ。何やってたんだ?』『いつもの日課だよ』『日課ねぇ…』
西村は、呆れたように溜め息を吐いた。
『お、鶯だ』
そんな西村の溜め息は気にも止めないで、辰上は楽しそうに笑った。
『…なぁ、辰上』『ん?』『何で、真剣にやらないんだ…?』『…?』『言い方がおかしかったな。お前が本気を出せば、絶対に強いと思うんだ。なのに…』
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