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誰も干渉してこない。
それを若者である彼女は己が『自由』と称し、そしてその青春を謳歌せんと胸をたぎらせていたのは既に二年前。
その時己が牙城として立派に内装した彼女の部屋も、時を経てただの隠れ蓑と成り下がっていた。
昼下がりの生温い日差しを、だらけきった家主をそのまま表すような部屋が息も絶え絶えに招きこむ。
だが家主の興味は今日一日の天気よりも何よりも、皓皓と情報を映し出すパソコン上の文字にあった。
「……クソ!あと少しだったのに!!」
いまいましげに吐き捨てられた言葉は、液晶画面にぶちあたって粉砕される。
行き場のない軽度な苛立ちが続き、眉間に寄った皺は形状記憶されている。
窓をあけなくともわかる柔らかな風合いも甘い土の匂いも、高度に精製されたぐうたらの前では形無しだった。
「一体どうしたら…。」
紫の縁眼鏡の奥にある鋭い双眸を歪ませて、魔窟の女主人はカチカチと右クリックをする。
弾き出された動画に示される神業を何度みたことか。
恐ろしいスピードでの迷いのない動きは、幾つもの死線を越えた者のようで、生唾を呑む自分の行動が非常にとろく感じる。
「次こそは!」
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