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F駅へ到着して、携帯を開いた。 ちょっと早すぎたかな。 『何時到着予定?早く着いちゃったから駅前のスタバにいるね。』 メールを送信して携帯を閉じた。 10分ほど経った頃に、向こうから小走りでやって来る人。 あ! 「マリアー!こっちこっち!」 手を振ってる私を見て、マリアが私の前に座った。 「ごめん。走らせちゃった。」 「ううん。平気。」 小さな声で呟くように言うマリアに微笑んだ。 「何か頼む?一応私もテイクアウトにしてもらったし、バスで飲んだら?」 「あ、えっと、うん。」 答えてレジに向かうマリア。 おとなしい人。 それが彼女の第一印象。 マリアは抹茶系のラテを頼んだ。 「何か以外だね。」 私が言うと、マリアは不思議そうな顔で首をかしげた。 「何かフルーツ系とか、キャラメル系の頼みそうなんだもん。」 「そうかな?抹茶、結構好きなの。」 「好みはあるしね。私なんかブラック飲んでそうとか言われるけど苦手だし。 今日から社会人だって理由でブラック飲んでみようと家で挑戦したけど失敗。 やっぱ甘い方が好きだな。」 そんな話をしてると頼んだラテが届いた。 「よし、じゃあ行こっか。」 駅前のバス停から約20分。 私達の勤め先の建物が目に入る。 会社は国際航路の船会社で、私達の仕事は主にグランド(陸上)業務。 元々エアライン関係の専門学校に通っていたからか、船会社だけど、合格した時はパパもママも飛び上がるように喜んでくれた。 マリアは同じ系列の専門学校だったけど、観光やエアライン関係とは無縁のクラスを専攻していた。 同じ会社を受けたのは、彼女の語学力にあった。 お互い見たこともなかったけど、面接前に学校の先生を通じて少しだけ話すようになった。 その後、二次試験、社長面談などを受けていくにつれ、少しずつマリアと打ち解けることができた。 そしてまぁまぁの倍率をくぐり抜けて、二人してやっとの思いで決まった会社だ。 「失礼します。」 一言添えて入口を入ると、制服を着た女の人が出てきた。 「おはようございます。蒼野さんと高橋さんね。こちらにどうぞ。」 「はい。」 返事をして後に続くと、応接室に通され、そのまま着席を促された。 席に着くと、その女の人は私達の前の席に腰掛けた。 そしてニッコリ微笑んで 「オペレーターリーダーの三井です。本当は統括リーダーが講義するんだけど、今入院してるので私から。」 と言った。
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