想い

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彼女は僕の腕の中にいる。僕を拒まないでいてくれる。 僕は彼女への想いを告白したかった。 でも、伝えたところでどうなるのだ。 自分の進路さえ決まらない僕は、彼女に何をしてあげられる?何の約束ができる? ならば、彼女への想いは胸のうちにしまっておくべきだ。 僕は彼女の肩に手をかけてゆっくりと離した。 間近でみる彼女の瞳、柔らかそうな唇に引き寄せられ、触れてみたいと思ったが、ぐっと堪えて離れる。 「ゴメン、ふざけて、帰る話はもうしないよ。」 そういうのが精一杯だった。 凍った雪の上を歩く、自然と2人手をつないで歩いた。 何も拒まない彼女の気持ち、 「離れたくない。」 この想いだけは同じなんだ。それだけでも充分だ。 これまで人として何も成長していない僕がこれ以上望んではいけない。 突然、抱き合う姿勢になり恥ずかしさも生まれ、2人とも無言になってしまったが、繋いでいる手の温もりは2人の心を表していると感じた。
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