想い

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思い出したように彼女が 「父が気にしていたけど、ご家族に無事でいることを連絡した方がいいのでは…と」 そうだった。それは長居させてもらう条件だった。 「着いたら早速電話してみるよ。」 玄関脇の公衆電話から連絡する。 彼女は夕飯の支度があるからと奥に消える。 今なら、母親しか家にいないだろう。連絡するにはちょうどいい時間帯だ。 予想通り母がでる。 「どこにいるの、何してるの、」 一方的に泣き叫んでいる。 僕は無事でいること、 思いつきで飛び出したが、きちんとした宿にいること、 1.2ヵ月は滞在すること、必ず戻るので捜さないで欲しいと、冷静に話した。 「せめて連絡先か住所、最寄り駅だけでも教えて欲しい。」と言われたが、 それでは意味がないし、これからも時々連絡すると言い、受話器を置いた。 何故か 「ごめんなさい、だから帰ってきて、」 と繰り返していた母。 別に、母が謝ることではないのに…。 僕は、部屋に戻る。 何気なくパンフレットを眺めた。 父は内科医、兄貴は外科、医者といっても色々あるのだ。 医者なら何になる?それすら考えていない。 教師かサラリーマン。 サラリーマンて、会社に雇われて何をするのか?それにしても、思い当たる職業がそれしかない。
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