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居ても立ってもいられず、ボクは空を切って矢のように村へと飛んだ。
村が近づくに連れて、黒い煙が立ちこめてきた。人間の悲鳴も聞こえる。肉が焼けるようなにおいがする。
少女の身が心配で、ボクは燃え盛る炎の中に飛び込んだ。
ボクは夢中で少女を探した。
真赤な花弁が少し焦げた。
断末魔があちこちから聞こえてくる。炎は村を舐めるように焼いていた。
ボクはふと、一軒の家に視線を向けた。小さな横笛が戸に飾ってあった。その家からは女の叫び声が聞こえてきた。
ボクは本能的に、鋭く突き出た爪で戸を引き裂いて家の中に飛び込んだ。
そこには、炎に囲まれた、大人になっても見紛うことない、美しく成長した、赤毛で、黒目の、あの少女が居た。
ボクはすぐさま少女を両手に抱き、焼かれて崩れかけた家から救い出した。ボクの手の中で少女は泣き叫んで暴れていた。
火の手が届かないところまで少女を運ぶと、そっと少女を降ろした。
ボクが声をかけようとすると、少女はボクを突き飛ばして、こっちへ来ないで、この怪物!!と泣き叫んだ。
ボクは耳を疑った。
昔、ボクと一緒に遊んだのを覚えてないのかと尋ねた。
少女は両手をむちゃくちゃに振り回し、ボクを罵倒する言葉を吐き続けた。
怪物メ
汚ラシイ
私ニ触ラナイデ
ナンテ醜イノカシラ
村ニ火ヲ放ッタノハオ前ダロウ
コノ卑怯者
アア気味ガ悪イ
誰カ助ケテ
恐ロシイ怪物
ボクの胸を、悲しみと怒りと絶望が貫いた。
ひどくめまいがした。
目の前が真っ暗になっていった・・・
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