ボクハ・・・

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 あの少女と別れてから幾百年かが経った。 少女はこの秘境に再び尋ねては来なかった。 ボクも少女を尋ねることはしなかった。 しかしボクは毎日毎日、かつて少女が住んでいた村があった方をつい眺めてしまっていた。 長い時が流れた今、少女はもう老いて死んでしまっていることだろう。 年月が流れれば流れるほど、ボクの心の中の少女の面影は濃くなって、愛しい思いはどんどん溢れていった。 ボクは長い長い年月を、少女のことだけを想いながら生きていた。 再び少女に会うことはかなわなかったが、ボクは幸せだった。 少女がボクを尋ねてきてくれたあの日は、ボクのこの一生の中で一番輝いた時だった。 少女と一緒に遊んだ時間は、最も大切で愛おしい思い出になった。 ボクは、少女を愛している。 これから先もきっと、変わらずに愛し続けるだろう。 このボクにとって、少女は全てなのだ。  太陽と月がこの空から消えてから、ずいぶん時が経った。 この砂漠どころか、この世界にもう生物は生きてはいないだろう。 ・・・怪物以外は。 しかし、ボクの真赤だった花びらは枯れて汚らしい茶色に変わり、細い身体はますます細くなり枯れ枝のように渇いている。 岩のようだった両手はすっかりもろくなり、泥の塊のようになっている。 足は地中で崩れていつの間にか砂になっていた。 そして今、怪物のボクにも、やっと死が訪れたようだ。 とても疲れていて、眠いような気がした。 緩やかに優しく、死が、ボクを包んでゆく。 ボクはゆっくりと目を閉じた。もう花弁で顔を覆う力は残っていなかった。 胸の前で指を組もうとしたら、ボロボロに崩れて風に攫われてしまった。指を組むのはあきらめた。 真っ暗なまぶたの裏の闇を見ながら、ボクは心の中で全てのものに別れを告げた。 サヨウナラ。 ボクが生きたセカイ。 サヨウナラ・・・ 最期の時、闇の中で瞬く愛しい少女の笑顔を見た。 ボクは胸に溢れる愛しさと苦しさとを味わいながら、二度と覚めることのない、深い深い眠りについた。
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