82人が本棚に入れています
本棚に追加
それぞれの一太刀目を俊孝は上手に避けて間合いに入り、急所を夕焼で突いた。
賊達は途端に気絶して、その場に倒れた。
義経が感心したように笑う。
「見事」
「…ふん」
別に嬉しくない。
俊孝は緒を結び直して、夕焼を左腰に下げる。
「…別に加勢などしなくとも良かったものを」
「そうか、自分でどうにかできたか。でも、さっきも言ったであろう?人の情けは、素直に受け取っておく方が得だと」
「そうかもしれないが…。…あの時、狼に木片を投げたのも、お前だったのか?」
「ああ」
「……」
借りをこんな奴に、仇敵に作ってしまった…。
最悪だ。
俊孝は頭を抱えたくなった。
「そなたがこんな所にいるということは、光風がこちらに来ているのか?」
「…ああ。今も、お前の屋敷で待っているんじゃないのか」
「そうか。それならば早く帰らねばな。一緒に来い。きっと光風もそなたのことを待っている」
「……」
そう言われると、頷くしかない。
と、義経が俊孝の顔をじっと見てきた。
「…何だよ」
「…ああ、そうか。そなたが似ていたのか」
「っ!?…それはどういう意味だ」
最初のコメントを投稿しよう!