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俊孝の心臓が、ばくばくと高鳴り出す。 「前に会った時、そなたが誰かに似ているというか、見覚えがある気がしてな。後で考えてみれば、先の戦の首実検で見た平家の者の首にそなたに似た雰囲気のものがあったな、と。それだけだ」 「…どうせ、他人の空似だろう」 「そう言われるとそうかもしれぬな」 そう言って義経は笑う。そして、夕焼に視線を移した。 「ほぅ…なかなか良さげな太刀ではないか」 「…元々は父の物だ。一族に伝わる物だということだ」 「ふぅん…」 どうやら、自分が平家の出であることは、まだばれてはいないらしい。 …良かった。 と、素朴な疑問が俊孝の脳裏をよぎった。 「…なあ」 「?」 「…お前、市からどうやってこの短時間で此処まで来たんだ?」 さっき市を歩いていたという割には、こちらまで来ているのはさすがに早い気がする。 「おや、そなたも市にいたのか」 「まあ…」 俊孝は目を泳がせつつ、頷く。 「声でも掛けてくれれば良かったものを」 誰が掛けるか。 「…質問に答えろ」 少し苛立ちを見せながら、俊孝が言うと、義経は笑って答える。 「何、天狗に乗せて来てもらったのさ」
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