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「…は?」
きょとんとした顔で俊孝が聞き返す。
それを見て、義経が軽い笑い声をあげる。
「な、お前…!」
「ほら、早く行こう。光風達が待っている」
そう促されて、俊孝は義経の後を付いて行った。
…何やかんやで質問の答えは、はぐらかされた気はしたが。
とりあえず、義経が神出鬼没な奴だというのは、よくわかった。
俊孝は彼の背を見ながら、そう思った。
◆◇◆
「…着いたか…」
疲れた声で俊孝が呟いた。
「そなた、何かやけに疲れておらぬか?」
「別に…」
例え人柄がどうであろうと、俊孝にしてみれば、彼が仇敵であることに変わりはない。
背を見せたのを好機と、後ろからこっそり義経を何度か攻撃してみたのだが、全て失敗に終わった。どれも綺麗に避けられてしまったのだ。
そもそも、攻撃されていることに彼が気付いていたのかすら、今一つわからないが。
「…なぁ」
「どうした?」
「俺が賊に絡まれてたこと、光風には言わないでくれ」
「…何故?」
「……光風に、無駄な心配をかけたくない」
「ほぅ。そなたは優しいな」
「…は!?」
途端に俊孝の顔が赤く染まる。
「わかった、言わぬ」
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