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◆◇◆
「――付いて来てくれて、ありがとう」
光風は、とある屋敷の前で歩を止め、俊孝の方を向いて言った。
「此処が、わたしの実家」
「へぇ…」
俊孝は、光風が手で示した先に建つ屋敷に視線を移す。
成る程。
中々に大きな屋敷だ。…上流の貴族や、平家の中でも地位の高い者の屋敷には及ばないが。
「でも、何故また来ようなんて思ったんだ?お前、帰るの嫌だとか言っていなかったか?」
「うん、まあ、そうだけど…」
少し恥ずかしそうに、光風は目を逸らしつつ口籠もる。
「なんだよ。はっきり言ってみろよ。…笑わないから」
「延寿が、そこまで言うなら…。…あのね。延寿の御蔭、なのかもしれない」
「…え?」
何故そのようなことを言われたのかわからない、という怪訝な表情になる俊孝。
「昨日の夜、延寿、わたしを部屋まで送ってくれた時、言ったじゃない。『孝行は親がいるうちにやっておけ』って」
「ああ…」
確かに、光風を部屋まで送り、別れ際にそう言葉を掛けた。
彼女が実家に、母の許に帰るのを渋るのを見兼ねてだった。
離れていれば、親子に限らず自然と再度会いたくなるもの。
きっとそれは、光風にも当て嵌まるはずだ。
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