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そう言うと、俊孝はそそくさと駆け出した。 「ちゃんと此処に来なさいよー」 「ああ」 光風の言葉を背で受け止め、俊孝は速度を上げた。 ◆◇◆ 「ふー…」 呼吸を整え、辺りを見回す。 確か、この辺りで、昨日は市をやっていたような…。 今日は市はなく、そこは人々が行き交う普通の道となっている。 辰沙は昨日、自分は大抵この辺りにいると言っていた。 だから、今日もいるだろうと考えたのだ。 「……」 が、見回す限り、彼らしき人物は見付からない。 ――もしかして、昨日のは、夢だったのではないか? そんな考えがふと浮かび、急いで頭から追い出す。 あれは、夢なんかじゃない。 そう自分に言い聞かせながら、捜索を続ける。 と、俊孝がいる場所から何丈か離れた所の道端で、ぼんやりと腕組みをして突っ立っている青年を見付けた。 俊孝は近付いて、彼の特徴を把握する。 長い前髪が彼の右目を隠し、太刀を腰に下げている青年。 ――間違いない。 「…辰沙!」 俊孝の声に気付き、辰沙はこちらを向くと、嬉しそうな表情になった。 辰沙の笑顔に釣られ、俊孝も自然と頬が緩んだ。
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