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「若!…昨日のは夢だったんじゃないかって、俺、何度も思っちゃいましたよ。……夢じゃないですよね?」 「俺もだ。…本当に夢じゃないかどうか、何なら、一度確かめてみるか?」 「いいですよ」 二人は互いの頬に手を掛け、「せーの」と同時につねった。 「「いっだ!!」」 案の定、痛みを感じ、自分の頬を押さえる。 「あははっ…やっぱり、夢じゃないんですよね?」 「そのようだ」 景色が心なしか霞んでいるように見えるのは、…さっきつねり合った時に出た、生理的な涙のせいということにしておこう。 「話すとしたら、此処はやっぱり人通りが多いです。移動しませんか?」 「ん、それもそうか。…誰に聞かれているかわからないものな。少し歩くか」 「はい」 俊孝と辰沙は並んで歩き出した。 幾らか歩いた頃、徐(おもむろ)に俊孝が口を開く。 「人もあまり来ない場所、お前は何処か知っているか?」 「んー…そうですねぇ。空き家とかは人は…ああ、無理だ。ああいう場所は、大抵は賊やらの溜まり場になってるし…。…一度都を出てみますか?」 「ああ…良いんじゃないか?」 「じゃあ、決まりですね」
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