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いたのは大鎧を着た中年の男と、その郎党らしき身軽な鎧を着た若い男。だが、俊孝よりは年上だろう。 俊孝は無言で太刀――夕焼を抜いた。 「貴殿は何者ぞ?」 中年の男の問いに、侮蔑を交えた口調で俊孝は返した。 「何故お前ごときに、我が名を告げねばならない」 「な、何…!」 男は眦(まなじり)を決し、顔を怒りに赤く染めた。 「角井殿。この者の身なりといい態度といい、もしや平俊盛の…」 「お…おお、確かに。歳もこのくらいのはず。ならば、その首、是非とも頂こう。角井直家(つのい なおいえ)と申す」 「…お前、運が悪いな」 「何?」 角井が地面に刺さっていた自分の太刀を抜き、構えたのを見て、俊孝は動いた。 火花が散った。 俊孝と角井は鍔迫り合いの状態になる。 「俺は今、虫の居所が悪い…!」 父は自分を置いて自害した。 前の戦では、一族も郎党も多くの人々を失った。その中に、俊孝の馴染みがいたことは言うまでもない。 やり場のないこの思い。 今爆発させないでいつさせろと言うのだ。 今目の前にいる、憎い源氏の者にぶつけないで何にぶつけろと言うのだ。
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