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「角井殿っ」
「良い!そなたは手を出すな」
手を貸そうとする郎党の男を止めて、角井は俊孝に向き直る。
俊孝の、あらん限りの恨みや怒りが込められた眼に、角井は一瞬怯んだ。
その隙を突いて、鍔迫り合いから逃れた俊孝の太刀が閃く。
「はああああっ!!!」
夕焼は角井の喉笛を斬り裂いた。傷口から鮮血が勢い良く噴き出した。
大鎧を着た角井。
鎧を脱ぎ、直垂姿の俊孝。
どちらが身軽かは、言わずもがなだった。
喉から血を噴き、角井はどうと倒れた。動く気配はない。
「角井殿!?おのれ、よくも!」
郎党の男も太刀を抜き、多少の返り血を浴びて佇んでいた俊孝に向かって来た。
勝負はすぐについた。
「ぐあああっ!」
喉から血を流し、郎党の男はその場に崩れ落ちた。
俊孝は顔に付いた返り血を袖で拭い、夕焼に付着した血を目の前に倒れている男の服で拭いた。さすがに太刀に付いた物は、自分の袖で拭く気にはなれなかった。
夕焼を鞘に納め、その場から離れようとした時、足が何かを蹴飛ばした。
見てみると短刀が落ちていた。
鞘に模様が描かれ、綺麗な装飾が施された、短刀。
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