懐旧

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 我が家の家計も火の車だ。と妻が日毎言う。だが、食材等も今のところ何とかしてくれている。どうにかしなくてはと考えるも、何の案も浮かばず、毎日寝てばかりいては妻に注意されるが、流石心中察してと言ったところか、余り辛く当たってくることは無い。  妻と結婚したのは丁度、廿四年前の夏、戦後間もなく生活は苦しかれど、それはそれで幸福な日々を過ごし、二年後には娘も生まれた。その時がもしかしたら幸せの絶頂期であったのかもしれない。  娘が漸く十歳になった夏の頃であったろうか、何時もの様に川に遊びに行ってくると言い、家を飛び出して行った娘はそのまま帰ってくることは無かった。  それからの十二年間で何とか気持ちの整理が付いた矢先であった。  妻は良くしてくれている。本当に感謝している。それだのに、何も出来ない自分の無力に愈々嫌気がさす。
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