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「どういう意味だ…答えろ。」
私は親父をキッと睨み付ける。
「そのままの意味だよ…アンタには歌音(カノン)さえ居ればいいんでしょうよ!音楽の才能の無い私はいらないんでしょうがっ!!」
私が吐き捨てるように怒鳴ると、親父は何も言わず、ただ私を見ていた……
少し…親父の眼は悲しそうだったが、私は見ないふりをして、顔を横に向けた。
「アリア…お前がそんなことになったのは私のせいか?」
親父の言葉に笑う私…
「何を今さら!妹のカノンばかり可愛がって、私のことなんか見てなかったくせに!そりゃそうよね、世界的有名な指揮者、音羽崇仁(おとは・たかひと)の娘がピアノの前でお漏らししたんだもんね!みっともなくて、娘として一緒になんか連れて行けないわよね!」
私が笑うと親父は、悲しそうに私を見ていた。
「アリア…」
「なんだよ?その眼は…情けないってか?安心しなよ、今日限り音羽から縁をこちらから切ってあげるよ…もうアンタには娘はカノンだけ…とハッキリ言えるでしょ!」
ダンッ!!
私はカバンを床に放り投げると、そのまま家を飛び出した。
「アリア!」
背中から親父の声がしたが、私は振り返らなかった。
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