0人が本棚に入れています
本棚に追加
しかして、俺は遅刻なんぞで気後れするような人間だったか?いや、違う。反語。
よって俺は巧妙に身を隠し、休み時間を見計らって堂々と我が教室に入室した。
「やはー、カオリン。今日も小綺麗だね!」
ついでに景気良く、どうでもいい女生徒に挨拶を投げ掛ける。
「えっ、ああ、天草く―――」
彼女はぎょっ、としていた。主に俺の頭部を凝視しながらの発言だった。
そこでティンときた。頭を触る。ツンツンしている。寝癖は未だ健在だった。
俺の寝癖がどんなものかは忍術学園に在学している食いしん坊の一年生の寝癖を想像してもらえると理解は容易だ。
さて、閑話休題。
取り敢えず、まだ掛けるべき言葉を迷っているカオリンに言う。
「すごいだろ?やっとスーパー地球人になれたんだー」
「はぇ?」
「カオリンも五年くらい山に籠もればスーパー地球人へと至ることが出来るだろう」
「は、はぁ・・・」
よくわかっていないような曖昧な答えだった。退屈な奴だ。ただ間に入った萌えワードは俺の中で高得点を叩きだしていたのは内緒である。
「って、あたしの名前はマナミ!どうやったらカオリンになるの!?」
名前を間違えたことに関しては「あははー」と曖昧に誤魔化し、俺はカオリンに背を向けた。
思いの外、つまらない対応だったので少しガッカリしながら席に着いた。
席に着いたはいいがやることがない。ので、伏して寝ている前の席の斎藤を叩き起こした。
「んが」と紀元前の人類のような声を発しながら斎藤は覚醒した。そして振り向いて、俺を見て、観測し、観察し、認識した。
「おぅ、いっつぁ、ボンバヘッ!」
ラッパーのように手を変に突き出しながら言った。そして、再び夢の世界へと飛び立っていった。それが斎藤の最初で最後の発言だったとさ。
だが、しかし。俺は満足だった。さすがは斎藤。カオリンと比較してなんとセンスのいいことか。恐らくこのクラスで推し量れない存在はこやつだけだろう。
まぁ、斎藤は精神的な障害があるからそれも起因するのだろうが、それを差し引いても俺は斎藤が大好きだ。予想できないからこそ面白い、素晴らしい。こやつはそれに関して最高の逸材なのだ。もう出番はないだろうけれど。
ともあれ、斎藤の一言で満足した俺は斎藤に習い、睡眠を取ることにした。願わくば夢は見ないように祈りながら・・・。
最初のコメントを投稿しよう!