42人が本棚に入れています
本棚に追加
貧乏人は、新しいサイズの服を買うのではなく、服に体型を合わせるべきだというものだ。
あの時、結局父親の体型が元に戻ることはなく、母の恵美子が新しい物を買っていた。
それは父親が、欲しいと言えずに苦し紛れに言った戒めだったのかもしれない。
おかげで、彼はセールだったとはいえ、良い物を買ってもらったと喜んでいた。
そう、父親の笑顔はこんなにも綺麗に脳裏に浮かぶ。
彼が今も元気に健在だということも理由かもしれない。
だが、それだけではない。
たとえ千絵自身が幼少時代の記憶の中でも、彼は笑っている。
記憶は常に入れ替わる。
何年も前のことを思い出そうとしても、そこに立っている顔は現在の物だったりするのだ。
最初のコメントを投稿しよう!