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ぼんやりと浮かぶその映像でさえ、誰かの記憶に残ることが出来るなら、せめて笑っていたい。
そう願うのは、人間として当然のことではないだろうか。
だが、それは案外難しいことなのだと気づいたのはいつ頃だっただろう。
そう考えながら、千絵は鞄に合ったそれをゆっくりと取り出した。
父親の言う通り、それに鞄の大きさを合わせた訳ではない。
かといって、鞄がそれに合ったわけではない。
千絵の算段した中で、それが一番根深いところまで届くと思ったからだ。
そう、その長さがちょうどいい。
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