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女は、ぼんやりとした眼差しを千絵に向けた後、その手を宙に彷徨わせる。
この女が嫌いでも、過去の憎しみを忘れられなくても、この行為は千絵の心臓を深くえぐるように痛めた。
女の口が微かに震えるが、声は出ない。
特に病気をしているわけではないので、酸素マスクもなく、ケアをしてくれる職員の監視も薄い。
それが都合良かった。
ここへ来たのは久しぶりだ。
部屋の番号だけは知っていたので、ここへ来るまでに迷うことはない。
この施設は、綺麗で安全。だが、花束を一つ持っていれば、簡単に侵入できるのだ。
女が、諦め切れないようにうなり声を漏らした。
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