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「ドアを叩いてやる」 ひいっと悲鳴を漏らしそうになったが、冴子を止めるよりも千絵は辺りを見回した。 男ではないため、性別的に見ても威圧的なものではないと感じられるだろう。 だが、反対に痴情のもつれ、と見られるだろう。 そうなれば、誤解だったときに何ならかの問題が起こる。 初めからどうして反対しなかったのだと、また後悔の念が沸く。 「すみませーん」 冴子の声が、想像よりは小さく聞こえた。 だが、反応はない。 その時点で、千絵の頭も冷静になっていく。 玄関先には、プランターに植えられたパンジーが綺麗に咲いている。 奥に広がる庭は芝が整えられている。
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