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「ねぇ、よくドラマでこういうシーン、ないっけ」 千絵が呟くように言ったが、もはや誰も笑うことがない。 二人の間の空気は冷たくなり、冴子は扉に手をかけた。 「待って!!何もしてはだめ。あたし、庭に行って見てくるよ」 冴子をその場に残し、千絵は庭に回った。 花はプランターだけでなく、庭の隅や至る所に植えられている。 まるで絵本の中から飛び出してきたような世界に、一歩踏み込んでから息を飲む。 花だけではない。 庭の正面には洋風の洒落た白いテーブルに、三脚の椅子が並べられている。 そこを囲うように薔薇がアーチのように飾られている。
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