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天井からぶらさがる小さなシャンデリアを目に焼き付けて、千絵はそこから離れた。 そして玄関先に戻ると、もう一度辺りに目を配る。 誰もいない。 だが、それと同時に冴子の姿も消えている。 「ちょっと……ここにいてって言ったじゃない」 千絵は辺りを見回し、携帯をポケットから取りだした。 帰ったこともないだろうし、勝手に駅まで戻ってもいないだろう。 もしかして。 そう考えてすぐに、玄関の扉の向こうから聞き慣れた着信音がした。 昔流行った、シンガーソング。
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