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「あまりイジメないでね」
ロバートは、サンタのベースの配線を変えながら、そう呟いた。
「そろそろヤバイかな~?」
「まだまだ大丈夫。ロックは激しくて当然よ。でも、なるべく大事にするほうがいいよ」
ロバートの爺さんは、ギタークラフトなんだそうだ。
小さい頃から教わったらしい。
その辺の楽器屋にメンテに出すより、ロバートに頼んだほうがずっといい。
なにより、タダでやってくれる。
「ちょっと休み」
ロバートは立ち上がり、体を大きく伸ばす。
「晃、ギター貸してね」
「どうぞ、弦高調節したいんだ」
「OK、低くだね?」
「うん」
俺のギター、ギブソンのレスポールカスタム。
黒いボディに、ゴールドのブリッジが目立つ、ツーハムにしては、わりと高い音が出る。
死んだ叔父の形見だ。
「とても弾きやすいよ」
そう言いながら、ジミヘンのマシンガンを弾くロバート。
いつ聴いても上手い。
ときどき、バンドで遊んで、一緒に演奏をすることもある。
その時のロバートはとても生き生きして、楽しそうだ。
音楽が好きなんだろう。
メンバーみんな同じだけれど、簡単にいつでもバンドができるアメリカでは、生の音楽はとても身近なものだ。
ロバートはあまり口に出さないけど、日本のバンドの活動のしかたに、最初は戸惑ったようだ。
「いい音。調子いいね」
カスタムを受け取る。
「ミー!呑み過ぎはダメだよ」
光井をたしなめ、ロバートは作業に戻った。
窓から心地良い風が入って来る。
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