5/7
前へ
/139ページ
次へ
・ リハが終わって楽屋に戻ったら、内田さんがだらだらと対バンのバンドのメンバーさんに語っていた。 42歳、バツ6、5人の子供に、隠し子二人。 前に内田さんが酔って話したプロフィールだ。 6回も結婚したことに驚いたのと、どうして5人の子供と二人の隠し子を一緒に勘定に入れないのかと疑問に思ったものだ。 それより、何を話しているかと思ったら、またバンドブームの頃の話だ。 「バンド転がしって知ってるかい?バンドをメジャーで2年間契約させて、旬の間の2年間さんざんこきつかって、利益だけ出して、2年後の契約終了するときにバンドを解雇するんだ」 バンドブームの頃の話は、嫌というくらい聞かされた。 このオッサンは、誰にでも同じ話をする。 「そろそろやめときなよ」 内田さんの腕を掴んで引っ張る。 「どうもすいませんでした」 バンドさんに謝る。 「いえいえ」 にこやかに応えてくれたのは、確かヴォーカリストさんだ。 オッサンを端に連れて行く。 「バンドの人全員に昔の話するのやめろって言ったろ」 「何言ってんだ!俺は自分の経験を若者に継承したいんだ!それが使命なんだ!」 ダメだ、このオッサン。 内田さんは、バンドブームの頃にメジャーデビューしたらしい。 三年間メジャーにいて、アルバムを2枚、シングルを4枚出して、ブームが消えたらあっさり解雇された。 と、7回は聞かされた。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加