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その日の輝美は機嫌が悪かった。
朝10時からパチンコを打ち出したが、確変はおろか小当たりすらなく食われてしまったのだ。
炎天下の中、永坂団地二階の自宅に戻った時には、昼の一時を回っていた。
階段を登り、部屋の前で鍵を取り出そうとした時だった。
中から、学校へ行っているはずの美鈴の泣く声が聞こえてきた。
(今日から短縮授業だったわ)
重い扉を開けると居間までが目に入る。
輝美の目にランドセルを放り出して、テレビゲームに釘付けになっている和也の姿が飛び込んできた。
美鈴は隣の部屋で泣いているようだった。
「和也! また一人でやって!」
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