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使いきったわけではなかったが、せめて今朝負けた分は今日のうちに取り返したかった。
宿題を終えた二人は、順番に輝美に見せに来る。
これはいつもの事だった。
輝美は和也の作文を流し読みすると、美鈴の算数ドリルを開けた。
九九の計算式で、穴埋め問題である。
解答欄のほとんどが、和也の字で埋まっていた。
「和也!」
「ちゃんと教えたよう」
和也は心外だという顔つきで抗議する。
「あのね、答えを教えるんじゃないの。どうやって解くのかを教えないと」
和也の両肩に手をつき、輝美は優しく言い聞かせる。
和也の気持ちは十分にわかっていた。
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