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パチンコでそれなりに勝ち、買い物を済ませた輝美は、息を切らせながら団地の階段を上がる。
ドアを開けた輝美は、信じられない光景を目にして、持っていたバッグをその場に落とした。
部屋干し用に通した竿竹に紐が結んであり、美鈴が吊るされていたのだ。
美鈴は舌を出してうなだれており、動く気配がない。
「な、な」
慌てて部屋にあがり、横に転がっている椅子を立てて、美鈴の足をのせる。
抱えた美鈴に生気はない。
何重にも巻かれたビニール紐が、首に食い込んでいた。
顔は鬱血して真っ青に染まっている。
「美鈴ちゃん!」
紐の結び目は団子になっており、輝美にはほどけない。
「和也! 何を! 何をしたの!?」
和也が悪びれた様子もなく裁ち鋏を持ってきて、輝美に渡した。
輝美は手を震わせながら、ビニール紐を切る。
「美鈴ちゃんに、首吊りの罠の解き方を教えていたんだよ」
和也は輝美の狼狽ぶりに、むしろ訝しく答える。
絶望を実感しつつ、悪夢なら覚めて欲しいと、輝美はただひたすら願った。
「ママ、大丈夫だよ」
そんな輝美を見て、和也が呟いた。
「セーブしてあるから」
<デジタルハザード・完>
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