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二度と来る事のないバーのマスターだからこそ話せたのかもしれない。
「反省して大人になっていく……。いいんじゃないですか」
マスターはそう言いながら、男の前に丸い小皿を出した。
皿には茄子が切り盛られている。
「バーボンには合わないでしょうけど水茄子です。妻の実家から送られてくるんで、どうぞ」
「え……?」
大阪の南部、泉州地方の水茄子は有名だ。
大阪から来た男にとって、大して珍しいものではなかった。
しかし、男はそれを口に出さず、マスターの好意をありがたく受け取った。
柔らかい茄子の食感ではあるものの、しっかり後に残る歯応えと塩味加減が絶妙だった。
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