始まりの旋律

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「わかってますよぉ~」 鈴音はまた間延びした声で応える。顔は満面の笑みで、『今すぐにも食べたい』という気持ちが見ているだけで周りに伝わってくる。 「先食べてていいよ」 すれ違うときにそう告げて僕は食券を買う。 ここの学食は美味しいことで有名だ。その美味しさはデザートも例外ではない。なんとかランチ、などのセットには旬の果物がデザーとしてつく。今の季節だとイチゴなのだろう。 「さて、何を食べようかな」 僕は券売機みて悩む。基本的にはどれも美味しいので悩む必要はないのだが。 「ラーメンかな」 だんだん暑くなりはじめるこの季節には、ちょっと合わないかもしれないが、自分が食べ切れる量を考えると、このあたりが無難であろう。 そう考えながら財布をポケットからとりだし、僕は券売機に小銭をいれてラーメンのボタンを押す。 お釣りはなく、ラーメンと印刷された券がでてくる。 「このラーメンって味なんだろ?」 独りでぼそっと呟く。
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