始まりの旋律

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鈴音の楽器探しをしていることを、すっかり忘れていた。 木で出来たフルートなど初めて見たため、僕はそれに夢中になってしまっていた。 「鈴音はさっきの叩いてたのでいいんじゃないか?」 と、とりあえず答える。 「奏ちゃん適当に言ってるよね?」 鈴音が怒っている。 声のトーンがいつもよいやや低く、怒っているのをわかりやすく伝えていた。 長い付き合いだとすぐにばれるもんだな。 「いや、真面目に考えてもスネアドラムはいいと思うぞ。まさに打楽器だし、叩く面も一つだけだからな」 と、今度は真面目に答える。 「やっぱり適当に言ったんじゃん。まぁ、いいけどさ」 と鈴音は小さく呟く。 そして今度は先生に向かって 「先生、私この楽器にします」 と元気よく言っていた。 「桐原さんは打楽器でいいの」 桐原……? あぁ、鈴音の苗字か。 最近あまり聞いていなかったからな。 名前でばかり呼んでいると、たまに苗字を忘れてしまう。 まぁ、よくあることだろう。
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